エコーとリハビリテーション

理学療法士の綿貫です。今回は当院にある超音波画像診断装置(エコー)について話してみたいと思います。
エコーというと産婦人科でお腹の中の赤ちゃんをみるために使うものを想像するかと思います。まさしくそれです。

以前院長がエコーと整形外科に関して記事にしておりましたが(エコーと整形外科)、今回はリハビリテーションにおけるエコーについて書かせていただきます。

エコーの紹介

当院リハビリテーション室に置いてあるエコーは3台です。

2台はコンパクトなもので持ち運びが可能なものとなっています。

僕も外部活動を行う際に院長に借りて持っていくことがあります。

コンパクトな2台に比べると残る1台は大きく機動力に欠けるものですが、とんでもない機能を秘めており理学療法士にとって喉から手が出るほど欲しいものがついております。それは後で説明します。

1:痛みの部位を把握できる

痛みの部位は様々であり、また同じような部位でも痛みをだしている組織は様々です。

しかし、治療を行う上でなにが痛みをだしている組織なのかを把握することは重要なことです。そこで我々は圧痛所見というものをとります。
圧痛というのは読んで字のごとく、押して(力をかけて)みがあるか確認することです。
これを詳細に行うことになるのですが、体の表面から筋肉がみえるわけではないのでかなりの技術を要します。

そこでエコーの出番となります。まずはエコーの画像を見てください。

これはエコーを撮影しながら筋肉を押している所です。
真ん中の画像と比べると左右の画像は一部筋肉が凹んでいる様にみえると思います。
左右の画像ではその場所が異なっていることがわかると思います。

では実際にどこを押しているのかをみてみましょう。

実際にはこの程度の差です。わずか指1本分の違いです。

わずか数㎜の違いで押している組織が異なってしまいます。これが圧痛所見をとるのにかなりの技術が必要と言われている理由です。
ですが、エコーを用いることで視覚的にどの組織を押しているかがわかるため、画像さえとれてしまえば簡単になります。

痛めている組織がわかれば、どうして痛みがでているのか、どのように治療を展開すればいいのかが分かります。治療方針を決定する上でかかせない痛みの原因をみつけるのに、エコーが活躍するわけです。

2:動態を評価できる

多くの患者さんは動かすと痛みが出現することがほとんどです。そのため我々理学療法士はどのような動作で痛くなるのかを問診や動作観察を行うことでなぜ痛みがでているのかを考察していきます。
しかし、先ほども述べましたが体表から観察を行っている以上、実際に体の内部の組織がどのように動いているかは頭の中で想像しているに過ぎません。
そこでエコーの出番です。エコーの画像をみてみましょう。

観察する動作は次の様な動作とします。

そして、この時の肩の前の動態を見ていきたいと思います。

腕を開くようにすることで、骨の上を筋肉が伸びたり、形を変えたり、筋肉の下を滑るように動いていることがわかります。

これらを反対側の肩や健常者と比較し異常をみつけることで、疼痛・可動域制限・筋出力低下などの原因を特定し、治療を行うことが可能となります。

3:トレーニングにも使用できる

ドローインという言葉をご存知でしょうか。体幹筋トレーニングの1つなのですが、特に腹横筋といったお腹の深層にある筋肉のトレーニングに有用とされています。
当院のブログにも紹介されていますが(人に最低限必要なコアトレーニング(後編))、息を吐きながらお腹を凹ませて行うとされています。
やり方は概ね正しいのですが、これが非常に難しいです。

では問題です。正しくドローインを行えている方はどちらでしょうか。

はっきり言って写真ではなんだかわかりません。ましてや服の上から見ているだけではまず間違いなくわかりません。基本的には筋肉を触れながら行うものですが、お腹の深層にある筋肉ですので、これも非常に技術が必要です。そこでエコーの出番です。

筋肉の厚みを見てください。明らかに左の方が厚くなっています。しっかりと力が入っている証拠です。エコーを見ながら行うことで正しく行えているかが一目でわかります。

4:硬さを評価できる

冒頭で述べたとんでもない機能というのがこれになります。

百聞は一見に如かず。画像を見てみてください。

画像は上腕二頭筋です。いわゆる力こぶですね。

左の画像が脱力した状態。右が力を入れた状態です。

色が変わり青から黄色がかっていることがわかると思います。

これはShareWaveErastgraphyという、硬さを色や数値で表してくれる機能です。力こぶを出せば硬くなりますよね。そうすると画像上は黄色や赤色に変化するわけです。

今までは筋肉が硬いといっても、可動範囲が狭いなどの間接的なもので示すしかありませんでしたが、この機能を使えばどの筋肉が硬いかが一目でわかります。また治療の前後でこれを確認することで本当に柔らかくなっているかも見ることができます。


長々とエコーの機能について述べていきたので分かりにくかったかと思います。

しかし、今まで感覚でしか分からなかったものが視覚的に分かるようになったことと、それを医療従事者だけではなく患者さんも一緒に変化を確認できるようになったことは、エコーの最大の利点であり、いち早く症状の改善を図るためのツールになることは間違いありません。

最後までお読みいただきありがとうございました。