熱中症対策 アイスラリーと手掌前腕冷却

こんにちは 理学療法士の隈部です。

7月も始まったばかりですが、例年よりも1か月早く梅雨が明けて、異常に暑い日が続いています。

梅雨明け後の6月末から最高気温が35度以上の日が続き、観測史上最長となる9日連続での猛暑日となりました。

気温は運動パフォーマンスにもとても大きな影響を与えるとされています。

例えば、カタールで開催される今年のサッカーワールドカップは気温の影響を考慮して、11月-12月に時期が変更されて開催されます。

暑い日の運動といえば、熱中症のリスクが心配されます。

そこで今回は、夏本番を迎える前に知っておきたい熱中症対策についてお話しようと思います。

熱中症対策

みなさんは実際にどんな対策を取っていますか?
すぐに思いつくのは、電解質を含むスポーツドリンクを摂取することやアイスタオル巻くことなどだと思います。

この辺りの対策はとても効果的ですが、もうご存じの方も多いと思います。そこで、 今回は巷ではあまり有名でない比較的新しい熱中症対策についてお話しようと思います。

今回紹介する熱中症対策は、アイスラリー手掌前腕冷却しゅしょうぜんわんれいきゃくです。

どちらもあまり馴染みがない言葉だと思いますが、それぞれ実際の方 法と効果について説明しようと思います。

アイスラリー

アイスラリーとは、シャーベット状の氷を水分が混ざった 状態で補給することで、体内から体温を下げようというものです。

下のグラフは 、運動時の体温変化を、アイスラリーと冷水それぞれで水分補給をした場合の比較です 。


このグラフの結果からも分かるように、運動のセット数を増やしていった時にアイスラリーを摂取している方が、冷水を摂取している人よりも深部体温が上昇しにくい ことが分かります。

アイスラリーの作り方は、氷と水(スポーツドリンク)を1:3の割合でミキサーにかけて、魔法瓶等で保存するという簡単なものです。

ただ、デメリットもあります。

慣れていない人はお腹が痛くなることがあるというものです。

小さい頃に「冷たい飲み物は、お腹が冷えるからやめなさい」と言われたことがある人もいると思いますが、アイスラリーは実際に消化器官の温度が下がります。

それにより腹痛が生じる方もいると思いますので、アイスラリーという水分補給も少量ずつ試してみるのが 良いと思います。

手掌前腕冷却

手掌前腕冷却とは、文字通り手掌から前腕部を冷やすことで、体温を下げるというものになります。冷たい水に手を突っ込む ただそれだけです。

太い血管が通る腋窩部(脇の下)や鼠径部(足の付け根)を冷やすのではないか?と思った人もいると思いますが、手には動脈と静脈がつながる動静脈吻合といわれる部分があり、ここを冷やすことで冷やされた血液が静脈をつたいながら、深部体温を低下させると言われています。

実際に行う際には、10-15度の水で、10分間程度冷やすことで、深部体温の低下を図ることができるとされています。

9度以下の水を用いると血管が収縮し、冷却効率が下がると言われています。冷やせば 冷やすほど良いというわけではないのでご注意ください。


今回は、熱中症対策を2つ紹介しました。

これから夏に向けて気温は上がり、熱中症のリスクは上昇します。 正しい熱中症対策をしながら、暑さに負けず運動を継続して頂ける方が一人でも増えると嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

参考文献: 競技者のための暑熱対策ハンドブック 国立スポーツ科学センター