心電図所見の見かた

QRS軸偏位

左軸偏位 心臓の流れが左に偏っている状態。左心室肥大などの疾患のほか、肥満者、高齢者にもみられることがある
右軸偏位 心臓の流れが右に偏っている状態。重症肺疾患で心臓に負担がかかるときに見られるが、痩せ型の健常者にも見られることがある
不定軸 正常ではないが、電気の流れがどちらに傾いているのか判断できない状態。この所見のみでは問題にならない
S1,S2,S3パターン 右室肥大を示唆する所見。正常な若年者でも見られることがあり、臨床的な意義を持たないことが多い

心室肥大・心房拡大

陽性T(V1) 健常者でも見られることもあるが心臓病に関連していることもある。
高電位 波形の振幅が大きい状態。健常者にも見られるため、これだけでは必ずしも病気とは言えない
右室肥大 肺高血圧・弁膜症・肺性心などにより右心室壁の肥厚または内腔の拡大が生じている状態。
左室肥大 高血圧・弁膜症・心筋疾患などにより左心室壁の肥厚または内腔の拡大が生じている状態。
右房拡大 右心房が異常に大きくなる状態。肺高血圧・弁膜症などにより生じる。
左房拡大 左心房が異常に大きくなる状態。高血圧・弁膜症・心筋症などにより生じる。
両室肥大 左右の心室壁が肥厚または内腔の拡大が生じている状態。

房室伝導障害

PR短縮 心房の興奮が心室に早く伝わる。早期興奮症候群(WPW症候群・LGL症候群など)で見られる。
WPW症候群(A型・B型・C型) "心房-心室間の電気が伝わる正常ルート以外に副伝導路が存在するため、心房-心室伝導時間が短縮。
頻拍発作や自覚症状がなければ問題ない。症状がある場合は精密検査を要する。"
PR延長 心房から心室への電気の流れに時間がかかっている状態。日常的にスポーツをする健常者に見られることもある
房室ブロックⅠ度 心房から心室への電気の流れに時間がかかっている状態。症状がなく程度が悪化しなければ問題ない
房室ブロックⅡ度 "心房からの電気刺激が心室へ伝わったり伝わらなかったりする状態。
ウェンケバッハ型は症状がなければあまり問題ないが、モビッツ型は心臓病併発の可能性が高い。"
完全房室ブロック 心房から心室への伝導が完全に途絶えている状態。失神や突然死の原因となり非常に危険であり、早急に精密検査が必要。

心室内伝導障害

RSR’パターン 心臓からの電気刺激は心室に入ると右室は右脚、左室は左脚前枝・後枝の3本に分かれて伝導し、左右心室を収縮させるが、
そのうちの右脚の伝導がわずかに傷害されているときに現れる。"
心室内伝導障害 心室内で電気信号が正常に伝わらない状態。基礎疾患がなければ問題のないことが多い
右脚ブロック 右脚の伝導が障害された状態。基礎疾患のない右脚ブロックは問題のないことが多い
左脚ブロック 左脚の伝導が障害された状態。前枝・後枝どちらかだけの場合は問題にならないことが多い
二枝ブロック 右脚と左脚(前枝・後枝のどちらか)が障害された状態。精密検査が必要。
三枝ブロック 右脚と左脚(前枝・後枝ともに)が障害された状態。精密検査が必要。
Coved型ST上昇 危険な不整脈(心室細動・心室頻拍)が起こる可能性があり、精密検査が必要。
Saddleback型ST上昇 経過観察となることが多いが、失神歴・家族歴がある場合は循環器内科の受診が必要。

心筋障害

平定T 心筋虚血で見られることがある(虚血性心疾患・心筋症など)。健常者でも見られることがある
陰性T 心筋梗塞や心筋症、狭心症、高血圧、脳内出血などでみられる。健常若年者にも見られることがあり自覚症状と合わせて判断する。
巨大陰性T 心筋症、脳血管障害、心筋虚血、低カリウム血症などで見られる。
ST-T異常 心筋虚血、心肥大、心膜炎などの心臓病で見られる。自覚症状がある場合は精密検査が必要だが、健常者でも見られることがある
ST上昇 心筋梗塞、心筋炎、ブルガダ症候群などで見られるが、健常者でも見られることがある
J波を伴うST上昇 緊急性の高い心電図所見(ブルガダ症候群、心筋梗塞などでみられる)。突然死を起こす可能性がある為、直ちに精査を要する。

心筋梗塞

R波増高不良 心筋梗塞や心筋症など強い心筋障害によって見られる。
異常Q波 心筋梗塞や心筋症など強い心筋障害によって見られる。
心筋梗塞 心臓の冠動脈が詰まり、心筋が壊死した状態。強い胸痛や圧迫感などがあるときは早急に対応が必要。

不整脈

左房調律 心臓の電気刺激が正常な場所(洞結節)からではなく、心房の別部位から始まっている状態。
房室接合部調律 心臓の電気刺激が洞結節からではなく、心房と心室をつなぐ房室接合部から始まっている状態。
房室解離 心房から心室に刺激が伝導せず、同期しなくなった状態。
洞徐脈 心拍数が1分間に50以下。運動習慣のある人・自律神経の異常・甲状腺機能低下などで見られるが心疾患の可能性もある。
息切れ・めまい・失神が起こる場合は早急に対応が必要。
洞頻脈 心拍数が1分間に100以上。
発熱・心不全・甲状腺機能亢進症などのほかに、健常者でも不安・興奮・緊張・アルコール接種や運動でも起きる
洞不整脈 脈の間隔が不整。健常人でもよく見られ呼吸性の場合が多いが、それ以外の原因がある場合もある。
補充収縮 洞結節からの心臓の電気刺激が遅れたり止まったりした際に、代わりに心房や心室が自律的に収縮する状態。
上室期外収縮 心臓を収縮させる通常の刺激以外に心房から異常な刺激が発生し、心拍が不規則になる状態。基礎疾患がなければ問題なし
心室期外収縮 "心臓を収縮させる通常の刺激以外に心室から異常な刺激が発生し、心拍が不規則になる状態。基礎疾患なければ問題なし
多源性・連発がある場合は精密検査を要する。"
洞房ブロック 洞結節からの電気刺激は規則正しく出ているが、心房内に伝導が伝わらない状態。
心室調律 洞房結節が機能しなくなった場合に、心室が自律的に電気刺激を発生する状態。
心房細動 心房が不規則に震えて脈が乱れる状態。
心房粗動 心房内が1分間に240回以上で規則的に収縮する状態。

その他の所見

反時計回転 心臓の位置がやや左回り(反時計回転)に回転している状態。一般的に問題ない
時計回転 心臓の流れがやや右回り(時計回転)に回転している状態。一般的に問題ない
低電位差 心電図の振れ幅が小さくなる所見。心筋梗塞、肺気腫、水分貯留、肥満などで見られる。
QT延長 "心臓の収縮時間が通常より長い状態。電解質異常や先天性心臓病で見られる。
過去に失神発作がある・近親者に突然死した人がいる時は精密検査が必要。"
高いT波 高カリウム血症(腎不全)、心筋梗塞発症直後、僧帽弁狭窄症などで見られる。健常者でも見られることがある

血液検査の見かた

血液学検査(血算)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
WBC(白血球数) "M3900-9800
F3500-9100"
/μL 感染症・炎症・白血病で上昇、ウイルス感染・薬剤の影響などで低下する
RBC(赤血球数) "M427-570
F376-500"
万/μL "数値の低下により貧血の診断ができる
貧血、多血、脱水の指標となる
血色素は酸素を運ぶ役割をする赤血球成分
ヘマトクリットは血液の中に赤血球が占める容積の割合のこと
HGB(血色素量) "M13.5-17.6
F11.3-15.2"
g/dL
HCT(ヘマトクリット) "M39.8-51.8
F33.4-44.9"
%
MCV "M83-102
F79-100"
fL 平均赤血球容積(1個の赤血球の大きさをあらわしている)
MCH "M28.0-34.6
F26.3-34.3"
pg 平均赤血球ヘモグロビン量(1個の赤血球に含まれるヘモグロビンの量)
MCHC "M31.6-36.6
F30.7-36.6"
% 平均赤血球ヘモグロビン濃度(赤血球の中のヘモグロビンの濃度)
PLT(血小板数) 13.0-36.9 万/μL 止血機能をみている、減少すると出血しやすくなる
白血球像 白血球分画により炎症・感染症・血液疾患などを反映している

血液学検査(凝固系)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
PT 9.4-12.2 血液の凝固能力(固まりやすさ)を反映している
延長の場合は血が固まりにくい(出血傾向)
肝機能の影響、ワーファリン(抗凝固薬)などの影響で延長"
PT INR 0.88-1.17
PT活性 66.0-127.6 %
APTT 24.0-34.0 PTとは別ルートでの血液の固まりやすさを反映、延長では出血傾向
フィブリノゲン定量 160-410 mg/dL 血液が固まるときに必要な蛋白質。低値で出血傾向、高値で炎症・感染などを表す
D-ダイマー 1.0以下 μg/mL 血栓が溶けてできる物質。高値では体内での血栓の存在の可能性。

輸血検査(血液型)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
ABO血液型 手術の為に予め必要な血液型検査である
輸血の可能性が高い場合はより詳しくABO,Rh(D)以外の抗体検査を行う
Rh(D)血液型
不規則抗体

生化学検査(蛋白)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
TP(総蛋白) 6.7-8.3 g/dL 血中の蛋白質の量。栄養状態や腎疾患、肝疾患、老化などで低下
ALB(アルブミン) 3.8〜5.3 g/dL 栄養状態の指標。腎機能障害・肝機能障害によりTP/Albのバランスが崩れる

生化学検査(肝臓)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
T-Bil(総ビリルビン) 0.2-1.1 mg/dL 肝機能障害で上昇し、黄疸の指標になる
AST(GOT) 10-40 U/L 肝臓や心臓の細胞に多く含まれる酵素。細胞が壊れると高値になる
ALT(GPT) 5-45 U/L 特に肝細胞に多く含まれる酵素。細胞が壊れると高値になる

生化学検査(腎臓)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
UN(尿素窒素) 8〜22 mg/dL 腎機能障害で上昇。脱水時や高蛋白食でも上がることがある
CRE(クレアチニン) "M0.61-1.04
F0.47-0.79"
mg/dL 筋肉の成分から造られ腎臓から排泄される物質。腎機能障害で高値となる。
eGFRcreat 60以上 mL/min 腎機能が低下すると低くなる

生化学検査(電解質)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
Na(ナトリウム) 135-147 mEq/L 脱水などで高値、腎疾患で低値となる
K(カリウム) 3.6-5.0 mEq/L 腎機能障害などで上昇する
Cl(クロール) 98-108 mEq/L 水分代謝異常の指標になる
Ca(カルシウム) 8.6-10.1 mg/dL 副甲状腺ホルモン、骨代謝、腎機能等の影響を受けて変動する

生化学検査(糖尿)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
血糖 70-109(空腹時) mg/dL 食事の影響で変動するが、糖尿病では空腹時でも高値となる
HbA1C 4.6-6.2 % 過去1~2か月間の平均血糖値を反映し、糖尿病の指標となる

生化学検査(炎症)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
CRP 0.30以下 mg/dL 体内に炎症があると上昇する

生化学検査(心臓)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
CK(クレアチンキナーゼ) "M50-250
F45-210"
U/L 筋肉・心臓・脳に含まれる酵素で、筋・心臓疾患などで上昇する
NTーproBNP 125以下 pg/mL 心臓から分泌されるホルモンの一種。心機能低下、腎機能低下、高齢者で高値となる

感染症検査(梅毒・肝炎ウィルス)

項目名 基準値 単位 検査値の見方
HBs抗原 陰性 - B型肝炎ウィルス感染の有無
HCV抗体 陰性 - C型肝炎ウィルスに対する抗体の有無。陽性の場合、体内にウィルスの存在の可能性あり
RPR法定性 陰性 - 梅毒感染のスクリーニング、結核・膠原病などでも陽性となることもある
TP抗体定性 陰性 -