なぜチョコを作るのか? そこにカカオがあるからだ

SEの内野です。

バレンタインが近づいてきました。普段見かけないチョコレートが店頭に並ぶこの時期、色とりどりのチョコレートは見ているだけでも目を楽しませてくれます。

さて、そんなチョコレートを「バレンタインに贈る」というのは日本独自の文化と言われています。製菓業界の販促から始まったこの文化も今ではすっかり定着し、バレンタインの時期には世界の一流ショコラティエが自慢のチョコレートを披露するため来日までになっています。

サロン・デュ・ショコラ2022
※今年はコロナの影響で、海外のショコラティエの来日はありませんでした

今回はそんな一流ショコラティエのチョコレートの話……、ではなく「素人がチョコレートを作れるのか?」にチャレンジしたお話です。

なぜチョコを作るのか? そこにカカオがあるからだ。

チョコレートと言えばカカオ豆。

まずはカカオ豆をオーブンで軽くローストします。ローストすることで、殺菌・水分を飛ばす・香りを出すといった効果があります。

そして、ローストしたものを、ひたすら皮と中身に分けていきます。

←皮を剥いたカカオ豆   皮付きのカカオ豆→

分けるのは当然手作業なのですが、指が痛くなります……。

右が皮、左が中身の豆です。この量を剥くだけで一時間ほどかかりました。

豆の香りは既にチョコレートです。

香りにつられてかじってみましたが、「チョコレートの香りのする苦くて固い豆」で、この時点ではまったく美味しいものではありません。

次にこの豆を細かく粉末にしていきます。

ミルで粉砕。

豆から粉になりました。

ところで、チョコって結局のところカカオ+砂糖。であれば、これに砂糖を加えて固めればもうそれはチョコなのでは……?

色々手順をすっ飛ばしてますが、試しにこれを湯煎で温めてみましょう。溶け出した部分の見た目はチョコレートです。

砂糖を入れて、

固めてみました。見た目だけなら完全にチョコレート!

 

いざ実食。

 

……。

……。

味はチョコです。香りもチョコです。

しかし食感がまったくチョコではない!

チョコレートのなめらかな舌触りがなく、ザラッとしていて、もろく崩れるチョコレート味のなにか。これをチョコレートとは認めない。

 

気を取り直して、きっちりやっていきましょう。

磨砕(グラインディング)

先程は粉末にしたものをそのまま湯煎で溶かしましたが、本来の手順としては粒子がなくなるまで磨砕します。

カカオ豆は約55%が脂肪分(ココアバター)であり融点も低いので、先ほど試した通り熱をかければ溶けてペースト状にはなります。しかし、それでは粒子の細かさ(≒なめらかさ)は圧倒的に不足。

ペースト状になるまでではなく、ペースト状になったあともひたすら磨り潰すのがなめらかさへの第一歩です。手作業では大変ですが、いろいろ試してみましょう。


乳棒&乳鉢。小さくて効率が悪い。


製麺機。滑ってしまってうまくローラーを通らない。


すりこぎ&すり鉢。結局これが一番でした。数時間ゴリゴリし続けます。腕の筋力との戦いです。

精錬(コンチング)

磨り潰して砂糖と混ぜたあとには「撹拌して練り上げる」という工程があります。ココアバターを均一にし、チョコレート独特の風味と香りを引き出す作業です。工場では「コンチェ」という機器を使って70時間以上も撹拌する場合もあるらしいのですが、さすがに3日も鍋をかき混ぜるのは現実的ではありません。そもそも、腕が限界です。

人力で無理なら機械にやらせましょう。

適当なモーターと歯車で撹拌機を作りました。水を入れての動作はOK。

これを、

ストーブの隅で温度に気を使いながら放置。思った以上にうるさいのが欠点です。

本来は熱をかけずに摩擦熱のみで柔らかくなったものを撹拌すると思われます。しかし、この小さなモーターにそれだけのパワーはないので、外部(ストーブ)から熱を加えました。それでどれだけ効果があるのかは不明ですが。

70時間は撹拌していませんが、それなりに練上げました。

調温(テンパリング)

最後に温度調整をして固めます。

なめらかな粒子を作るためには、ココアバターの結晶構造を一定にする必要があります。

ココアバターの結晶多形と融点・安定性1)

嗜好品としてのチョコレートに最適なのはV型(融点33度)です。
50度→26度→30度と温度を変化させることで、不要な結晶を溶かし必要な結晶(V型)だけが残ります。

これで型に入れて完成です。

さてさて、今度の味はどうでしょうか……。

手順すっ飛ばしたのとあんまり変わらないな?!

最初のものより明らかになめらかですが、やはりザラッとした感触は残ります。市販の100円のチョコに遠く及びません。

手作業でやる以上はこんなものでしょうか。人力の限界です。

まとめ

あのクオリティのチョコをあの価格で提供できる製菓会社は偉大。

これに尽きると思います。企業努力の賜物。自分でやってみてわかります、なぜあのチョコが100円程度で買えるのか、尊敬せざるを得ません。

今後は100円のチョコレートであっても十分に敬意を払って味わおうと心に誓いました。

引用:1) 上野聡他 チョコレートのおいしい物理学 日本物理学会誌 第71巻 第11号2016年

参考:国立科学博物館「チョコレート展」 2012年11月3日~2013年2月24日 開催