プールで運動っていいの?!
皆さん、こんにちは。
冬は温泉、夏は海やプールが大好きな理学療法士です。
9月に突入し、体にこたえる暑さは少しずつ落ち着いてきたものの、まだ真夏日や夏日が続いている日々です。
毎年言っているような気がしますが、今年の夏も例年より暑かったような気がします。
そんな夏は、皆さん海やプールに足を運びたくなりませんか、、?
「泳げないから海とかプールはあんまり好きじゃない」
「日に焼けてシミになるから、あんまり外に行きたくない」
「家でアイス食べてテレビを見てる方がいい」
など色々な言葉を耳にしますが、好きなことは人それぞれ違いますし、みんな違ってみんないい!!
私は、今年もなんだかんだ4回ほど海に行ってきました。
かといって、私の海に行った出来事をお話しても面白くないなと思い、海やプール関連で何かお話出来ることはないかなと考えた結果・・・
海・プール=水中=水中での運動!!!
患者さんと接する中で、
「プールで運動するのっていいの?」
「歩いた方がいいよって言われたけど、外でいっぱい散歩した方がいいの?」
という言葉を耳にすることがあります。
そこでその言葉を思い出して、今回は水中での運動についてお話しし、少しでも皆さんのお役に立てればなと思い、書かせていただきます。
水中運動とは
水中で運動をするという考え方は、ヨーロッパを中心としたアクアセラピー(水治療)に基づき、古代エジプトやローマの時代から始まったと言われています。
それがフィットネスのための水中運動として始められたのは、1960年アメリカ人が泳げない高齢者に垂直姿勢で運動を指導したことが最初なのだそうです。
水中運動とは、「浮力、水圧、抵抗、水温などの水の特性を利用した運動のこと」と言われており、老若男女を問わず、スポーツ選手をはじめ、高齢者、肥満者や下肢に関節障害を有する者、リハビリテーションを必要とする者等が簡単に行うことができるとされています。
そのため、各個人の体力や目的に合わせた運動をすることができます。
水の4つの特性
水中運動を行ううえで、水にはこのような4つの特性があります。
○浮力
浮力とは、水が物を浮かせようとする力のことを言います。
水中運動は、常にこの力がある状態で運動することになります。
なので、浮力があることにより、体重による負荷を減らすことが出来ます。
水の深さと体重の関係は、下の図のように言われています。
簡単に言うと、たとえば体重が60kgの方であれば、胸まで浸かる高さで運動をした場合の負荷は、18kgになるということです。
このように水中では、浮力の働きによって、陸上で歩いたりジャンプをしたりするよりも衝撃が小さくなり負担が大きく軽減されます。
そのため水中では、膝や腰に痛みがある人や筋力が少ない方でも、関節や靱帯に余計な負担をかけずに、簡単に運動に取り組むことが出来ます。
○抵抗
抵抗とは、水中などで物が移動する際に、移動する方向とは反対向きにかかる力のことを言います。
少し難しいことを言うと、水の密度は空気の800倍以上もあり、水中で陸上と同じ速さ、同じ姿勢で動こうとすると、陸上よりも12~15倍の抵抗を受けます。
そのため水中運動では、陸上より大きな抵抗を利用して、効率よく筋力を発揮させることが可能です。
なので、自分の運動量に合わせて抵抗の大きさ・負荷を調節することが出来ます。
○水圧
水圧とは、水が水中にある物に及ぼす圧力のことを指します。
水中で立っている場合は、上半身よりも下半身に高い圧力が加わるため、静脈血が心臓に戻りやすくなります。
これにより心臓へ戻ってくる血液量が増えるため、心臓から排出される1回の血液量が増え、結果陸上よりも水中での方が心拍数は低くなると言われています。
そのため、陸上よりも息が上がることなく、低い心拍数で運動することが出来るのです。
水中では心肺機能が高められたり、血液の循環が良くなるため筋肉が柔らかくなったり、身体を動かしやすくなったり、健康増進にも繋がります。
○水温
水中運動を行うには、33℃前後が望ましいとされています。
水の熱伝導率は空気より20倍以上、比熱は空気より4倍くらい高いと言われています。
つまり、水に入っているだけで多くの熱が非常に速いスピードで身体から奪われていきます。
そこで、人は体温が下がると元に戻そうとして皮膚血管の収縮が生じ、血液循環や代謝が活発になり、陸上にいる時よりも多くのエネルギーを消費します。
このように、体内で熱を生み出そうとすることで体温を調整する機能が鍛えられ、免疫機能の向上も期待することが出来ます。
私も幼稚園生から中学生時代までずっと水泳をやっていましたが、風邪を引きにくかったのはやはり水泳のおかげだったのかなと改めて思いました。
両親には感謝ですね。
水中運動の効果
先ほどお話しした4つの水の特性を利用して行う水中運動は、健康維持・増進やケガや病気の予防、リハビリテーションや運動の一手段として行われています。
水中運動は、子供でもお年寄りでも、やさまざまな病気やケガで普通の運動が難しいと方でも、負担をあまりかけずに、自分のペースで運動をすることが出来ます。
この水中運動には色々な効果があると言われています。
★関節の可動域改善や筋肉の柔軟性向上
⇒水中でストレッチを行うと、浮力の影響によって筋肉の緊張が落ちるので、陸上で行うよりも関節の可動域が広くなったり、筋肉が柔らかくなり柔軟性が上がりやすくなり、痛みを感じにくいことがあると言われています。
★水の抵抗によって、筋力を強くすることが出来る
⇒動きを速くすることや、抵抗を受ける面積を広くすることで筋力を強くします。
★全身の体力や持久力の向上
⇒水中での有酸素運動は、全身を使うので抵抗も加わり、体力や持久力が向上し全身をバランス良く調整・鍛えることが出来ます。
★リラクセーション効果
⇒先ほどお話ししたように、下半身から血液の循環が良くなるのでむくみが緩和したり、リラクセーション効果を得ることが出来ます。
また、水中にいることで精神的なリラックス効果も得られると言われています。
★早期リハビリテーションの一手段として用いることが出来る
⇒水の深さによって負荷を変えられるので、水中運動は下半身のスポーツ障害から競技に復帰するための、早期のリハビリテーションとしても活用されています。
このように、対象者一人一人の体力レベルや目的に合わせて、負荷を調節し運動を組み合わせることができ、より効果的な運動が可能となります。
水中運動の種類
水中運動には色々な種類があります。
幾つかご紹介するので、是非やってみてください!!
※年中夢中・水中ウォーキングより
<ウォーキング>
<エクササイズ>
○スクワット
○踵上げ
○足上げ
最後に
長くなりましたが、水中運動は老若男女を問わず、あまり負担をかけずに運動が出来るので、取り組みやすい運動の一つとなっています。
また、簡単に負荷を調整することが出来るので、自分の体力や目的に合わせた運動をすることが可能です。
途中でお話したように身体に良い効果もたくさんあるので、是非皆さんに水中運動をしていただき、色々な効果を実感し楽しく運動をしていただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
引用・参考文献
・アクアエクササイズ(水中運動)の効果と方法 健康長寿ネット
・井上 夏香ほか, 水中と陸上運動時における下肢筋群の筋活動量,2010
・金田晃一ほか,水中および陸上運動時の下肢筋群における筋活動とその違い,2004