膝の痛みについて
ぜんしん整形外科、理学療法士の安田です。
今回はマニアックな話で、膝関節の膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)についてご紹介します。
当然のことで皆さんは「??」ってなると思います。(笑)
脂肪体という事で少し余計なものと考える方もいると思います。
ですが、膝蓋下脂肪体は膝関節を機能させるためにとても必要な組織です!!
そして、皆さんが知らないのは当たり前なのですが、理学療法士ですら大学の授業で学ばない組織でもあります。
では、なぜ今回この組織を取り上げるかというと、膝前面の痛みの原因として一番考えられる組織だからです。
そんな、大事な組織をなぜ大学の授業で学ばないのかは正直僕もわかりません。(笑)
なので今回、膝前面の痛みに悩まされている方のためにも膝蓋下脂肪体のことをご紹介しようと思いました。
膝の組織
はじめに、膝の痛む箇所といっても、前面・内側・外側・後面、お皿の上とたくさんあります。患者さんへどこが痛いですか?と質問をした際に「膝を曲げるとお皿の奥が痛い」「力を入れた時にお皿の両側が痛い」「膝の外側から内側で前が痛い」などと、明確な場所を示すことができない方も多いです。その中でも最も多いのが、膝の前面が痛む方です。
膝前面にはどのような組織があるかというと……
以上の組織があります。前面の痛みだけでもこれだけの組織が痛みに関係していると言われています。
沢山あると思いませんか!!
その中でも膝蓋下脂肪体は血管が多く存在し、もっとも痛みを伴いやすく炎症を起こしやすい組織です。
膝蓋下脂肪体
膝蓋下脂肪体はここに存在しています。
膝蓋下脂肪体には膝の曲げ伸ばしを効率よく動かす役割があり、伸ばす時にはお皿の内側と外側、曲げる時にはお皿の下と膝関節の中へと動きます。
その他にも、膝への衝撃を緩和、お皿の可動性をよくする、膝関節の内圧調整もするといわれています。
具体的にどのような時に痛みが出るかというと……。
臨床をしていて個人的に一番多いと感じるのが、「階段の降段時に痛みが出ること」です。その他には、膝の手術をされた方が、歩行時や膝の屈伸運動で痛みを訴えるケースが多いと感じます。
「なぜ?」ってなると思います。
膝蓋下脂肪体は血液が豊富で炎症を起こしやすい組織だからです。では、どうなると炎症が起きやすいかというと…
- 変形した膝関節
- 可動域制限され膝が伸びない状態での日常生活動作
- 手術で膝蓋下脂肪体を侵襲した場合
が多いと言われています。
炎症が起きた状態が続くと、膝蓋下脂肪体に繊維化という状態が起きます。
繊維化とは組織が硬くなる現象のことをいいます。この繊維化という現象は、可動域制限され膝が伸びない状態での日常生活を続けた場合や、膝の手術後に起きやすくなります。
繊維化が生じると本来の膝蓋下脂肪体の役割が果たせなくなり、
- 膝関節のスムーズな動作
- 曲げる時のお皿が圧迫されないようにするための緩衝
- 大腿四頭筋への力の伝達
といったことが上手くできなくなります。そのため、膝関節はもちろん、他部位にも影響を与えていきます。
この状態の患者さんからは、よく「膝の油が切れてギシギシしながら曲がる感じがする」と聞きます。
すごく困りますよね…
そして繊維化は炎症後2週で始まると言われています。
すごく早くないですか!!
では、実際に膝蓋下脂肪体に痛みが出てきたらどのように炎症を緩和したらいいのか、簡単ですが紹介していきます。
まずは膝の痛みが膝蓋下脂肪体によるものなのかチェックしてみましょう。
- 左右の膝を伸ばして見比べて腫れていないか見てみましょう。
- 熱感があるか左右で確認してみましょう。
- 実際に押して痛みを確認してみましょう。
- 3の痛みは膝を伸ばした時に強くなり曲げた時には和らぐか確認してみましょう。
- 膝蓋下脂肪体を左右で触った時に硬さがあるか確認してみましょう。
どうでしたか?
もし、痛みがあった場合は下記のエクササイズをしてみてください!
膝の簡単なエクササイズ
1、HeelSlide
ポイント
・全ての動作を手で行うようにしてください。
・股・膝・足の力は入れないようにしましょう。
2、Setting
ポイント
・姿勢は正すようにしてタオルを膝裏でつぶすようにしてください。
・おしりが浮かないようにしましょう。
まとめ
膝前面の痛みで一番多いのは膝蓋下脂肪体です。階段の降段時などに痛みを伴いやすく、炎症が起きやすい組織です。膝のエクササイズは脂肪体の動きも出るため膝痛予防にも効果的ですが、やはり痛みが出た時は我慢や自分で解決せず病院を診てもらうのが一番です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。