骨のミカタ 骨密度検査のミカタ ~ヤムチャに思いを馳せながら~ とあるクリニックの整形外科医の骨の話 骨粗鬆症編(4)

めっきり寒くなってきて、体が冷えたときは、温かい食べ物・温かいお茶が恋しくなりますね。応援している野球チームの好きな選手が他チームへ移籍してしまい落ち込んでいる副院長の丸田です。

令和4年11月12日、当クリニックとZ-fitnessが連携し、初の試みとして“歩行教室”を開催させて頂きました。

最初に私から“ミニレクチャー”として、歩行にとって大切な、体を支えて筋肉が作用するための土台になるについて、そしてその大事な骨にとってやっかいな病気である骨粗鬆症について、基本的な内容をお話させて頂きました。
その次に当クリニック連携施設であるZ-fitnessの橋本トレーナーから“講義 + 機能的に歩くために必要なストレッチなどのエクササイズ”という流れで行いました。参加された皆様とても楽しそうで、私も一緒に体を動かしとても楽しくあっというまの約2時間でした。

今後もこういった活動を続けて、骨の大事さ、骨粗鬆症のこわさ、そして運動の大切さを広めて、骨粗鬆症とそれによる骨折で困る人が少しでも減るように活動を続けていきたいと思っています。


さて今回のブログのテーマですが、骨密度検査とその結果のミカタ(見方)についてです。
患者様に過去に他院で受けた骨密度検査の結果のことを聞くと、これはしようがないのですがモヤッとした答えが多いです。

「だいぶ前に別の病院で骨密度の検査はしたけど、年相応と言われそのままになっていて。検査結果の紙はあるけど見方がわからなくて。」

キーとなる項目の数値(詳しくは後述します)もあるのですが、骨粗鬆症を治療中の方でも、それを答えられる方はほとんどいらっしゃらない印象です。しかし、例えば高血圧の治療中の方が、自宅で測定した数値を見て今日の数値が基準から高いとか、ちょうどいいとかわからないで測定している方は、あまりいないと思います。もちろん細かい数値をしっかり覚えて頂かなく大丈夫です。ただ検査結果の見方がわかれば家にある結果用紙を見返すことができるようになります。
治療中の方はもちろん検査結果が骨粗鬆症でなくてもギリギリなのか、それとも余裕があるのかといった具合に、血圧の高い低いみたいになんとなくでも分かっていたら御自身の骨への関心も高まり、その結果普段の生活が骨にとって良いスタイルに少しでも変わっていくのではないでしょうか。そう考え、今回は骨の味方である骨密度検査方法とその検査結果の見方、そしてポイントとなる数値等について記事を書いていきたいと思います。

まず検査法です。

デキサ法

骨量検査もいろいろあります。まずDual-energy-X-ray absorptiometry 略してDXA(DEXA)法があります。デキサと言ったりします。

名前にも入っているX線(放射線)を使いますが、デキサ法の被ばく線量は胸のレントゲン1枚より少ないです。2種類の異なるX線を照射して骨と軟部組織の吸収率の差により測定します。

通常推奨されているのは足のつけねの骨(大腿骨近位部)と腰椎(背骨の腰の部分)での測定で、横になって検査を受けて頂きます。
測定開始すると機械がウィーーンと動き、一部位の測定にかかる時間はほんの数十秒です。その代わり再現性を高めるために足の向きや腰の曲がり具合が大事になってくるのでポジショニングをしっかりとやります。金属類が測定範囲に入るのも良くないので、検査時は着替えなくてもいい無地シャツ+金属のないズボンでの来院、または検査着に着替えやすい格好での来院をお願いしています。

この検査は骨粗鬆症の診断にも治療の効果判定にも有用です。これを読んであたりまえじゃんと思われるかもしれませんが、診断することはできなかったり、治療の効果判定には不利といった検査もあります。デメリットとしては、手首を測定するだけのデキサやほかの測定方法の機器よりサイズが大きく場所を取り、購入金額も上がることでしょうか。当院では骨粗鬆症の治療も力をいれていて、このデキサ法で大腿骨と腰椎を測定できるものを使用しています。

MD法

次にmicrodensitomerty、MDです。手の甲の骨の第2中手骨という骨で測定します。手のレントゲンで検査できるので簡便です。骨粗鬆症の診断には用いることはできますが、中手骨には海綿骨(骨の内側にあるスポンジのような骨で骨粗鬆症の治療において大事なターゲット)が少ないため骨粗鬆症の治療の効果判定には不利です。

定量的超音波測定法

放射線を使わず超音波が骨を伝わる速度を用いて評価します。下のイラストのように通常海綿骨の多い踵(かかと)の骨で測定し、超音波なので妊産婦さんにも使用しやすいです(測定することはあまりないかもしれませんが)。簡単にざっくり調べるスクリーニングには有用で人間ドック等ひろく使われていますが診断まではできません。この検査で異常が指摘されたら診断可能な検査であるデキサを受けるのがよいと思います。

以上、検査方法について説明しました。どれがダメという話ではなく、いくつかの検査があってそれぞれ特徴(いいところ)があるということを知ってもらえればと思います。⇓がまとめの表です。

次は検査結果のミカタについて説明してきます。

~骨密度結果~

方法

当院ではデキサ法で腰椎・大腿骨の骨密度を測定しています。診断にも治療効果判定にも有用なものです。
が当院で使用している検査結果用紙です。それぞれの項目について説明していきます。

部位

2部位で測定しているのがわかるでしょうか?上が腰椎(背骨の腰の部分)。下が大腿骨頚部(太ももの骨の体側の付け根の部分)です。

腰椎を骨折すると腰が曲がったままになったり、怖い合併症だと折れた骨が神経に当たって下肢の麻痺が起きたりします。また大腿骨を骨折したら通常すぐには歩けません。そのため多くは手術が必要になります。どちらも身体にとって重要な骨でそれらの骨密度を測ることはとても意味のあることになります。

数値

下のように3つの数値がならんでいます。上から順に説明していきます。

① は骨密度です。骨の面積1㎠あたりに含まれるミネラル、主にカルシウムの量(グラム数)です。

② 同じ年の人の骨密度の平均値と比べて何パーセントかを示しています。この数値自体では骨粗鬆症の診断基準には関わりませんが、同い年人と比べてどうなんだろう?と気になる方はこの数値でわかります。

③  “数値”で一番大事なのはこの数字です。これは若年成人平均値(young adult mean)と言って、若い大人の骨密度の平均値と比べたときの割合のことですね。YAM値(ヤムチ)と言ったりします。

「若い大人の骨密度の平均」とは、具体的には腰椎は20~44歳、大腿骨は20~29歳の骨密度の平均値です。自分の若いころの骨密度の目安と言ってもいいかもしれませんが、この若い人達の骨密度の平均値と比べて、どの程度下がっているかで骨粗鬆症かそうでないかを判断し診断します。診断基準に関しては下記に示しましたが大事なのが70という数値で脆弱性骨折(立った高さからの転倒による骨折)をしたことがない場合、YAM値が70%以下で骨粗鬆症と診断されます。これは治療目標にもなる数値です。

グラフ

左のグラフの*が測定した骨密度です。問題となる範囲は赤と黄色で、赤は骨粗鬆症が疑われる、黄色は骨量が減少している範囲です。一目で自分の数値が黄色信号か、赤信号かわかります。

右のグラフは検査値の経過履歴です。以前の検査と比べて上がったか下がったかを直感的に捉えられます。

最後に

今回のブログは以上です。目指せ!ヤムチ知名度アップということで

お忙しい中記事を読んで頂きありがとうございました。

最後に今年9月29日に共同通信社などで報道されたニュース記事を載せておきます。骨粗鬆症は自分で気付くことが難しく検診を受けることが大事ということで、国も動いているようです。