その背すじが伸びたきれいな姿をいつまでも ~とあるクリニックの整形外科医の骨の話 骨粗鬆症編(2)~
副院長の丸田です。前回は骨粗鬆症の怖い面について書きましたが、先手先手で対応していけば心配ありません。今回は、未来もスッと伸びたきれいな背すじのままでいて頂くための検査から治療までを説明します。
◆まずは検査を!
当院では65歳以上の女性の方や、危険因子がある閉経が早かった方、そして男性でも70歳以上であったり、危険因子がある方には検査を推奨しています。一度骨折してしまうと、連鎖骨折を起こしたり、治療開始後の休薬も考慮できなくなるため、まず最初の骨折を防ぐことが非常に重要で、そのためには検査が大事になってきます。 (このあたりの詳細は前回の記事をご参照ください)
骨の検査の方法にはいろいろあります。手の骨(第2中手骨)でも骨密度測定ができ診断は可能ですが治療効果の判定には向いていません。骨の評価として超音波を使った測定方法もありますが、これはあくまでスクリーニングで診断確定には用いられていません。骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインには腰椎(背骨の腰の部分)と大腿骨近位部(太ももの骨の付け根)の両方を、エックス線を用いるDEXA法(DXA法)で測定することが望ましいとなっています。当院ではガイドラインで推奨されているDEXA法で腰椎・大腿骨近位で測定可能な機器を使用しております。
さらに骨粗鬆症とわかれば、次に採血での検査が推奨されています。骨を壊す細胞(破骨細胞)や骨を作る細胞(骨芽細胞)の働く程度を知ることができる骨代謝マーカーや、カルシウム値等を測定し薬の選択や治療効果の判定に使用していきます。
※当院看護師の「骨密度検査体験記」も合わせてご覧ください。
◆診断について
診断に重要となるのが骨密度の数値です。脆弱性骨折(軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。立った姿勢からの転倒やそれ以下の外力によるもの)がなければ若い成人の方たち(腰椎では20~44歳、大腿骨近位部では20~29歳)の骨密度の平均値と比較して、その70%以下になると骨粗鬆症と診断がつきます。(脆弱性骨折がある場合、その骨折の場所によって診断基準が変わってきます)。また、すでに骨折している人・したことがある人は骨折の仕方・部位にもよりますが、それだけで検査しなくても骨粗鬆症と診断がついてしまう場合もあります(もちろん治療していく上で検査は必要となります)。
◆骨粗鬆症とわかったらしっかり治療しましょう
骨粗鬆症はこのように知らない間にも忍び寄ってくるものですが、しっかりとした治療があります。今はいろいろなメカニズムの薬剤があり、選択肢も増えていますし、その薬剤の組み合わせや使用順等によりさらに治療効果が上がることが分かってきました。骨密度低下の程度、骨代謝マーカーの数値などから治療方針を提案していきます。
治療薬の効果について、それぞれの薬剤の効果が論文で報告されていて、どれぐらいの期間でどれぐらいの骨密度の上昇が期待できるかが示されています。例えば週一回注射するテリパラチドという注射薬では2年で腰椎骨密度を約10%上昇、毎日打つタイプの注射薬だと約2年で13.4%上昇、そして内服薬の一つであるアレンドロネートは2年で約6%の上昇の効果が期待できる、等です。下の図をご覧下さい。これは先ほど最初に説明した週一回注射するテリパラチドという注射に関して縦軸が骨密度の変化率、横軸が時間(週)ですが、治療を続けることでしっかりと骨密度が上昇していることがわかります。骨折の連鎖も治療を継続することで減らすことができます。
治療の目標は若年成人の骨密度平均値の70%ですので、どれぐらいの期間で目標達成できるかを考え治療方針を決めていきます。そのほか骨折リスクのより高い場合等、状況に合わせて治療していきます。そして最終目標は骨折リスクを減らすこと、そして骨折しないようにすることです。また骨密度等の条件を満たせば治療を休むことができる場合もありますが、一度でも骨折していると休薬は難しくなります。
◆ずっと素敵な姿のままで
以上、怖いことも書きましたが、骨粗鬆症は骨折をする前にやるべきことをやることでこの記事で書いてきたようなリスクは少なくできます。一人でも多くの方に素敵な姿で長く元気でいて頂くため、骨の専門家である整形外科医として少しでも皆様の力になれればと考えております。
※上記記事は「予防と治療ガイドライン2015年版」や各学会で学ばせて頂いた内容等から作成しております。