肩が痛いときは痛くても動かしたほうがいいか?
理学療法士の原田です。
今回は肩の患者さんのリハビリテーション中によく尋ねられる質問について、僕なりの考えをお伝えできればと思います。
それはずばり「肩が痛いときは痛くても動かしたほうがいいのか?」という質問です。
先に結論を述べるとケースバイケースです!
そこで、どういった場合に動かしたほうがよいのか、痛みを我慢して動かすべきではないのかをお伝えできればと思います。
肩の構造
まず、肩の痛みを考える上で肩の構造を知っておくとより理解が深まります。
上の図は肩の動きに関係する関節を示した図になります。
肩を動かすにはこれら4つの関節と背骨のすべてが機能的に動く必要があります。
皆さんが考える「肩」は解剖学的には肩甲上腕関節のことを指しているかと思います。
僕らは肩の動きを考えるときに「肩甲上腕関節」と「その他の関節」に大別して評価し、リハビリテーションを行います。
従って、肩のトラブルが生じたときは、先程述べた「肩甲上腕関節」と「その他の関節」(肩甲骨の動きといってもよいかもしれません)のどちらに問題が生じているのかを考える必要があります。
以前、当ブログで理学療法士の綿貫が肩の構造について説明しておりますので、よろしければそちらも合わせてご参照いただけますと幸いです。→【腕が挙がらない!その原因とは?】
肩の痛み
それでは本題です。
肩が痛いとき皆さんは下の図のどちらに症状が近いでしょうか?
肩の痛みは①のいわゆる肩こりに近い症状か、②の肩そのものの痛みのどちらかであることが多いです。
肩こりに近い症状
①については普段から姿勢が悪い、またはデスクワークやPC作業等座って作業するときの姿勢が悪い、長時間にわたって同じ姿勢で作業することが多い、……といった場合にこりが生じやすくなります。
この場合は首から肩にかけての筋肉が硬くなり、筋肉内の循環が悪くなることで痛みが生じる場合が多いので、首や肩甲骨を動かし固くなった筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで、筋肉がポンプのように働き循環が良くなることで柔らかくなり、痛みの軽減や改善が図れる可能性があります。
このときのポイントは「肩甲上腕関節」ではなく「首」もしくは「肩甲骨」を動かすことです。
しかし、例外として
- 安静時より腕から手にかけてしびれを感じる場合
- 首を動かしたときに腕から手にかけて鋭い痛みや痺れを自覚する場合
は無理に動かさず、病院を受診することをおすすめします。
肩そのものの痛み
続いて②の肩そのものの痛みについてになります。
まず、肩の痛みについて整理しましょう。
「どこが痛いか」はすぐに伝えられるかと思いますが、他にも痛みについてポイントとなる点がいくつかあります。実際に痛みがある方はご自身の状態を確認してみてください。
1点目は「痛めたきっかけがあるかどうか」、「きっかけがあれば何をして痛めたか」です。
きっかけなく痛みを自覚するようになった方もいれば、明確なきっかけがあって痛みが出ているという方もいるかと思います。
怪我や転倒、事故等、明確なきっかけがある場合は一度病院を受診した方がいいと思います。
2点目は「どうすると痛みがでるか」です。
「ある動きをすると痛みがでる」人もいれば、「動かさずに安静にしていても痛みがある」という人もいます。症状がひどいと「寝ているときも痛くて眠れない」という方もいます。
3点目は「痛みの質や程度」です。
「痛みの質」はおおまかにズキッと鋭い痛みである「鋭痛」と鈍く痛む「鈍痛」に分けられます。
「痛みの程度」については痛みそのものが主観的なものであり、客観的に痛みを評価することは不可能です。そこで当院では「痛みがない状態を0」、「想像できる最大の痛みを10」とする10段階で点数付けする方法を用いて痛みの程度を評価しています。
皆さんの症状はどうでしょうか?
- 「安静にしていても痛い」
- 「痛くて夜眠れない」
- 「痛みの程度が7~10」
以上のいずれかが当てはまる方については病院を受診することをおすすめします。
その理由は、肩の何かしらの組織が傷んでいたり、炎症を起こしている可能性が高いからです。
炎症が生じていると安静にしていても痛みがあり、少し動かしただけでも強い痛みを伴うことが多々あります。また、肩が傷んでいる可能性があるのにそれを無理やり動かしたらもっと悪化するかもしれませんよね?
このような場合は無理に動かさず受診していただけると良いかと思います。
では「痛みの程度はそれほど強くない」という方や、「同じ動きで痛みがでる」という方はどうでしょうか。
基本的には安静にする必要はなく、痛みのない範囲で動かして大丈夫です。
ですが、強い痛みでなかったとしても、この「同じ動き」というのが日常生活動作や、就業中、趣味等の余暇活動の中で必要な動作なのであれば受診することをおすすめします。
その理由として、肩周囲の骨や関節、肩周囲の軟部組織等に何らかの問題があり、その動きをすることで肩にストレスが生じ痛みが出ていると考えられるからです。
普段することがない動きやする必要のない動きであれば、その動きをしないよう注意しながら日常生活を続け、どうしても気になるようであれば受診し相談してみていただくといいと思います。
今までの内容をまとめたチャートになりますので、判断に迷ったときの参考にしてみてください。
長くなりましたが、いかがだったでしょうか?
このブログが、読んでくださった方の身体に対する関心を高め、皆さんの疑問解決の一助になれば幸いです。
実際に受診したときの治療内容やセルフエクササイズ、セルフケアの方法については当院のHPや、当ブログの院長が書いた記事をご参照ください→【五十肩って放っておいても治るの?~整形外科専門医が教える本当の五十肩の治療~】。
最後まで読んでいただきありがとうございました。