他人事ではなかった破傷風

破傷風、という言葉をご存知でしょうか?

聞いたことがある方も多いと思いますが、そこまで意識したことがない!という方もいらっしゃるかと思います。

今回は、わたしの体験談を含めて破傷風のことをお話ししたいと思います。

※ 今回のブログには我らが副院長のミニコーナーもありますよ!!

通勤途中の激痛

ある朝、出社の為にいつもと変わらず歩いていたところ、職場のすぐ近くの歩道にて、足裏に鋭い違和感を覚えました。

ガラスがぐさりと突き刺さったかのような感触があり、「え!何が起こったの?どうしよう!」という気持ちで、おそるおそる靴を履いたままの足裏を確認しました。

すると、道に落ちていたネジが、靴を貫通して、足裏に刺さっている状態でした。

こんなことは初めてで、え?一体何が起こったの?というのが正直な気持ちでした💦

わたしは、靴裏に刺さっているそのネジをどうして良いのかわりませんでしたが、

痛みも徐々に感じ始めてきたため、とっさにネジをグイと抜き、とりあえず目の前の職場へなんとか辿り着きました。

ちなみに、その時のネジがこちら!

すぐに当院の看護師へ相談したところ、早急に傷口の治療、破傷風の注射を勧められ診察を受けました。

破傷風の手当

まずは傷口の消毒手当て、1週間の抗菌薬が処方され、すぐに破傷風の予防注射(トキソイド)を打ってもらいました。

この注射は、この1ヶ月後、半年後と続いて打つことが必要です。

今回はすぐに受診し適切な治療をしてもらい、大事には至りませんでした。

足裏の傷も順調に回復しました✨

このような思わぬ出来事から、その後の処置が遅れたり適切な処置が出来なかったりすると、破傷風という病気になる可能性があり、時には命に関わることもあります。

破傷風とは…

土の中などにいる破傷風菌傷口から体のなかに侵入し毒素を出し、以下のような症状があらわれる病気です。

  • 手足のしびれや痙攣
  • 口の周りのしびれ、口が開けにくい
  • 首すじの痛み、ものが飲み込みづらい
  • 息がしづらい等

重症になると、息ができなくなり死に至ることもあります。(感染者の20%〜50%)

治療としては、

症状により、点滴・注射・抗菌薬を使用する場合があり、筋肉症状が強ければリハビリテーションを行うこともあります。

破傷風にかかる事例

🌟破傷風にかかるリスクがある事例についてもご紹介しておきます。

  • けがをして、傷が土などで汚れた
  • 錆びたくぎ、汚れたくぎなどが刺さった
  • 土いじりで傷ができた
  • 動物に咬まれた

など、今後もしも上記のような事が起きてしまった時には早めに医療機関への受診をお勧めします。


今回は、ある日突然わたしの身に起こった災難を、誰にでも起こりうる事としてぜひ皆さんに少しでも知っておいていただきたいという気持ちでブログにしました。

知っていて損はない事だと思いますので参考にしていただければ幸いです。

ここで、より詳しい解説をお伝えできればと、副院長のM先生に相談をしたところ「ドクターM」として参加してくださいました。

以下、ドクターMの破傷風ワンポイントコーナーです!

ある日の休憩時間、診察室にて

M:いやー、ホットコーヒー(主に寒い時期はベローチェのアメリカンを選ぶことが多い)を飲むとほっとするなぁ、ふぅー。

トントン

事務スタッフ:失礼します。あの先生、お願いがあるのですが?

M:おっ、急にどうしたの?

事務スタッフ:自分がけがをして破傷風のワクチンを打ったことをブログで書いているのですが、そこに、先生に少し内容を追加して書いてもらっていいですか?

M:えっ・・。(骨粗鬆症の検査結果の見方について自分のブログ書いたばかりで、専門医の更新やら、確定申告やらで、今いそがいいんだけどなあ。でも破傷風は大事なことだし、自分の勉強にもなるって考えればいいか。何よりスタッフが困っているし。そうだよね、うん、うん。がんばれ自分)。

事務スタッフ:せ、先生、少し固まっていたようですが、どうしました?

M:な、なんでもないよ。うん。もちろん、いいよ。ただ少し時間頂戴ね。

事務スタッフ:はい。ありがとうございます!

そういうことでここからは「ドクターMのミニコゥナァーコーナー!!破傷風編!」カラ元気ではない。マインドセット切り替え済。ただ、ふざけてると思われないかドキドキしているし、破傷風編と書くべきか迷った。)

最初のポイントは傷の処置です。では具体的に何が一番大事でしょう? そ、れ、は洗うことです。水でばい菌を洗い流す。これにつきます。もし洗い流せない汚れが残る組織があればデブリードマンと言って汚染された組織を切除することもあります。もちろん異物(今回は錆びたネジ)が残っているのは論外です。ちなみにこのことは破傷風に限った話ではなく外傷による感染を防ぐために大事で、基本の処置です。(その他、より細かく創の深さ、受傷からの時間、壊死組織があるかどうか等の評価を行い、洗浄・デブリ・異物除去以外の止血・縫合等の処置が必要かどうかなど様々な判断が必要。これらは次の2つ目のポイントにもつながる。)

そして2つ目のポイント。聞き慣れないトキソイドという言葉が出てきましたね。予防注射の正式名称は「沈降破傷風トキソイド」です。これは病原体自体に対してではなく病原体がつくる、ここでは破傷風菌がつくるTetanospasminという毒素(トキシン)を無毒化したものを体内に入れてこの毒素に対しての免疫をつけることが目的です。よって破傷風自体を殺すのではなく、破傷風菌が体内に入って毒素を出しても大丈夫なように備えておくというものです。

これは子供のころにほかのワクチンと混合したもの(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ混合ワクチンなど)を打っているので、最後の接種から10年経過してなければ打つ必要はありません(ただし3回以上打っていることが条件)。接種歴が3回未満や接種歴が不明の場合は今回の様に3回接種していきます。

ただしもっと急ぐ必要がある場合があります。受傷からの適切な創処置までの時間が経っていたり傷がとても汚かったりと破傷風菌が入っている可能性がより高いと判断した時です。その時は即効性のある抵抗破傷風人免疫グロブリンという、毒素を中和するものを投与します。

トキソイドを何回打つか、追加でグロブリンも打つかなどの詳細は、国立感染症研究所のホームページに書いてありフロチャートになっていてとてもわかりやすくなっています。創の状態、ワクチン接種歴など総合的に評価し、治療方針を決めていきます。

国立感染症研究所のホームページより

こうみると子供のころのワクチン接種記録はとても大事なので、しっかりと管理しておくことをお勧めします。

ミニコーナー(変な小芝居含めたもの)に付き合って頂きありがとうございました。それでは今日はこの辺で。

🌟最後に…

わたしが今回履いていた靴は靴底がわりと薄いものでした。

今回の件を通して、地面に直接面する靴底はとっても重要なものだなぁと実感!

やはり、足を守るという機能性も考え、今後靴👟を選ぶ時には、靴底が厚めのものやクッション性のあるものを選んでいこうと思います☺️