マニピュレーションについて
こんにちは。理学療法士の原田です。
今回は肩関節の疾患のうち「凍結肩」に対する治療である「マニピュレーション」に関して、現在わかっていることを皆様にお伝えできればと思います。
そもそも「マニピュレーション」とはなにか?
簡単に述べさせていただくと、患者さんの動きが固くなった肩関節に麻酔をかけ、医師が肩関節を動かすことで、可動域拡大を図る手術になります。
目的は肩関節を包む袋状の組織である「関節包」を破断する(=破く)ことになります。
詳細については当院院長のブログ記事に説明がありますので、そちらをご参照いただけますと幸いです。
(⇨ 五十肩って放っておいても治るの?~整形外科専門医が教える本当の五十肩の治療~)
「麻酔をかけた状態で動かす」や「袋を破く」と聞くと恐ろしく聞こえる方もいらっしゃると思います。
ですが、「マニピュレーション」の有用性に関して多数の報告があり、今回はそれらを、わかりやすくご説明できればと思います。
マニピュレーションに関する報告ついて
ここでは「痛み」「関節可動域制限」「日常生活上での支障の程度」を指標とします。
痛みは
- ・ 安静時痛(=じっとしているときの痛み)
- ・ 夜間痛(=夜寝ているときの痛み)
- ・ 動作時痛(=腕を動かしたときの痛み)
に分けて考えます。
皆川は肩の痛み、可動域ともにマニピュレーション後に改善したと報告しています(下記のグラフ参照)。
また、長期成績についても、西頭らはマニピュレーション施行2年後時点での再発はなく、可動域や日常生活動作での支障を含め良好な成績が維持されていたとの報告しています。
また、
① マニピュレーションをした群(M group)
② マニピュレーションをせずに関節内注射を施行した群(S group)
③ 関節鏡視下で手術をした群(O group)
※いずれの群も理学療法実施
を比較した研究では
- 関節鏡視下手術より、マニピュレーションの方が早期に可動域改善効果を認めた。
- 夜間痛がなくなるまでの期間は半分程度だった。
(夜間痛消失までの平均期間:マニピュレーション2.6週、関節内注射5週、関節鏡下手術4.7週)
と報告されています。
他にも、多くの先生方がマニピュレーションの有用性について報告しています。
簡単ではありますがマニピュレーションに関する報告を一部抜粋して述べさせていただきました。
ご不明点があるかと思いますので、当院に来院された際には担当の医師や理学療法士にぜひ質問してみてください。
以上で終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考文献
- 皆川洋至:凍結肩の診断と治療(肩関節拘縮に対するサイレント・マニピュレーション).MB Orthop.25(11):93-98,2012.
- 西頭知宏,笹沼秀幸:凍結肩に対する腕神経叢ブロック下肩関節授動術後 2年の臨床成績 .肩関節.39(2):529-531,2015.
- 三谷誠ら:凍結肩に対する超音波ガイド下 C5,C6神経根ブロック後の徒手授動術:ステロイド関節内注射,鏡視下授動術との比較.肩関節.40(3):1018-1022,2016.
- 西頭知宏ら:重度凍結肩に対する第5.6頚椎神経根ブロック下授動術の短期成績.肩関節.40(2):635-638,2016.
- 梶田幸宏ら:当院における超音波ガイド下斜角筋間腕神経叢ブロックを用いた肩関節授動術の成績.JOSKAS.41:54-55,2016.
- 西頭知宏:超音波ガイド下腕神経叢ブロックによる肩関節授動術の有用性の検討.肩関節.37(2):799-802,2013.
- 皆川洋至:五十肩(凍結肩)保存療法―サイレント・マニピュレーションを中心に―.MB Med Reha.157:85-90,2013.