放射線と人体への影響について

ぜんしん整形外科の放射線技師です。

患者さんによく「何回もレントゲンを撮影しているけど、健康に影響はないの?」「骨密度の検査は数分かかるけど、被ばくは多いの?」といった質問を受けます。なかには、「被ばくが不安だから放射線検査はしたくない」という方も少なからずいらっしゃいます。

今回は、そういった疑問や不安を解消できるよう、放射線と人体への影響についてお話しします。

▷日常生活で浴びている放射線

私たちは日常生活を送る中でも、宇宙や大地などから放射線を受けています。これを自然放射線といい、日本では年に約2.1mSvです。(世界平均は約2.4mSv)

▷放射線の人体への影響

質問をされる方の多くは、放射線による発がんを心配していると思いますが、100mSv以下の被ばくによる発がんリスクは1.08倍と非常に低く、喫煙や飲酒の発がんリスクは1.6倍など、生活習慣による発がんリスクのほうが高いとされています。(確率的影響といいます)

また、低線量の被ばくは積算する必要はないといわれているので、月に何回かレントゲン検査を受けたとしても、健康上の問題はありません。

以下は国立がん研究センターが発表している、がんになるリスクに関する表です。

要因 がんになるリスク
1000~2000mSvの放射線を受けた場合 1.8倍
喫煙・飲酒(毎日3合以上) 1.6倍
痩せすぎ 1.29倍
肥満 1.22倍
200~500mSvの放射線を受けた場合 1.19倍
運動不足 1.15~1.19倍
塩分の取り過ぎ 1.11~1.15倍
100~200mSvの放射線を受けた場合 1.08倍
野菜不足 1.06倍

参考文献1より引用

付け加えると、ある一定の線量(しきい線量)を超えた被ばくにより生じる影響を確定的影響といいますが、通常の検査で受ける被ばく線量は、しきい線量よりもはるかに低いので、心配はいりません。

注:吸収線量[Gy(グレイ)]は放射線により物質が吸収するエネルギー、等価線量[Sv(シーベルト)]は放射線の人体への影響を表す単位です。換算には放射線の種類により変化する「放射線加重係数」を用います。医療で広く用いるX線やγ線の放射線加重係数は1なので、吸収線量[Gy]=等価線量[Sv]となります。

▷当院における放射線検査について

当院で行う放射線検査は一般撮影(レントゲン)と骨密度検査があります。

一般撮影(レントゲン)

一般撮影での被ばく線量は、撮影する部位や体格によって異なりますが、0.02mSv~数mSv程度です。放射線技師は、撮影する部位はもちろん、患者さんの体格に合わせて線量を調整し、過剰な被ばくをさせることなく、診断価値のある画像を医師に提供するよう努めています。

骨密度検査(DEXA法)

当院で行う骨密度検査は約0.2mSvと低い線量で検査しています。検査には数分かかりますが、だからといって被ばく線量が高いわけではありません。一般撮影と骨密度検査を同じ日に行っても問題ありません。

▷おわりに

放射線と人体への影響について、簡単にではありますが、お話させていただきました。皆さんが安心して検査を受けていただくことの一助となれば幸いです。なお、妊娠の可能性がある場合は事前にスタッフにお知らせください。その他、検査の際にご不安な点がありましたら、気軽にお尋ねください。今後ともよろしくお願いいたします。

▷参考文献

1)日本診療放射線技師会 医療被ばく安全管理委員会:医療被ばく相談Q&A,医療科学社,2018.