柔軟性の向上はストレッチだけで可能か(後編)

ぜんしん整形外科、柔道整復師の橋本です。前回柔軟性に関わる筋の解剖と柔軟性低下を起こすメカニズムについてお話ししました。

今回は柔軟性低下を防ぐ対策の話です。

組織の外傷や加齢・固定といった生理学的な筋の変化は、神経レベルで筋の伸張性やコントロールに変化が出てくるため、柔軟性を向上させる方法だけでのアプローチでは改善が難しいということです。

そのために筋の長さを伸ばすストレッチの後には、筋力を必要とする筋力トレーニングを取り入れることで、神経の働きを伴った機能的な可動域を獲得出来るようになることが柔軟性の向上に必要となってきます。

ただ可動域が広いだけでなく、可動域すべてで神経の働きが繋がっていること。つまり、筋発揮できる可動域がどれだけ確保されているかが重要になっていきます。

ここから柔軟性を獲得するだけでなく、筋発揮を伴うストレッチの方法と流れを説明します。

ストレッチの種類とアプローチ

まずは、スタティックストレッチです。スタティックとは「静的」を意味します。

ストレッチをかけたい箇所をゆっくりと伸ばし、最初にテンションが加わったポイントで20~30秒ほど止めます。

激しい運動を行う時はスタティックストレッチを行わないことが推奨されますが、必要に応じてスタティックストレッチを取り入れることもあります。

例えば、筋のアンバランス・過活動がある場合は問題となっている筋の硬さだけでなく、他の筋や関節運動への影響を懸念しなければなりませんので、このような場合は対象となる筋にのみスタティックストレッチを取り入れます。

次に行うのは、アクティブアイソレーテッドストレッチです。これは「相反抑制」を利用して可動域を広げるストレッチです。ある一つの筋肉を縮めた際に、反対側の拮抗筋(逆の働きをする筋肉)が弛緩するというメカニズムです。

このような姿勢では左股関節の腸腰筋(股関節前面)が伸ばされていますが、拮抗筋である大臀筋(股関節後面)に力を入れます。そうすることで腸腰筋により緩みやすい状態になります。このストレッチは筋活動を伴うストレッチなので、1~2秒程度の短い時間で、5~10回を目安に行います。

最後に行うのが、ダイナミックストレッチです。これは勢いや反動を利用したストレッチです。 ストレッチは様々ありますが、動きの中で柔軟性を獲得し最大可動域を広げていきます。ここでは「伸張反射」(伸びたゴムが急に縮むような働き)を伴った筋肉の素早い伸び縮みを教育すると、スポーツや実動作に近い柔軟性を獲得すると言われています。

また人の身体に対する運動面(動く方向)は3面あると言われます。この場合ですと前後面のストレッチになります。この時に身体を横に傾けて左右の方向にストレッチを加えたり、身体を捻じる水平方向にストレッチを加えることで、色んな方向に対して制限がかからないように柔軟性を獲得することも大切になります。

こういったストレッチのアプローチ効果をまとめると

・筋バランスの適正化
・関節可動域の拡大
・筋の過緊張の緩和
・関節ストレスの緩和
・筋腱付着部の伸張性の向上
・全ての筋を通常の機能的筋長に保つ

以上のような効果が期待できることから、ただ柔軟性を獲得するのみのスタティックストレッチを行うだけでなく、筋肉の中に存在する神経に働きをかけるアクティブアイソレーテッドやダイナミックストレッチなどの筋力にアプローチを行うことで、機能的な可動域・動作を獲得することが出来ると言えます。

まとめ

最後に柔軟性と筋力トレーニングを行う目的は

・受傷のリスクの減少
・筋バランスの崩れを防ぐ
・既存のアンバランスや関節の機能不全を修正する
・姿勢の崩れを修正(姿勢改善)
・筋力、関節可動域、パワーの向上

に関連してきます。 傷害のリスクを減らすことと、パフォーマンスアップしていくことの目的を達成させるために、柔軟性もトレーニングとして行うことが必要になってくると思われます。

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最後までお読みいただきありがとうございました。