体の目印 ~骨の形について~
こんにちは。
旅行&各地のグルメが好きな理学療法士の井上です。
突然ですが、リハビリの際に患者様から、こんなことを聞かれることがあります。
「服やお肉(脂肪)の上から体を触って、よく体のことがわかるね~」と。
今回はこの質問にお答えしつつ、私たちがリハビリの際に行っていることについて、お話できたらと思います。
私たちが体の部位を特定する際に、目印としているのが「骨」です。
皆さんもご存じのように骨は硬いため、押した時に、脂肪や筋肉と違って硬く跳ね返す感触があります。また骨には突起のように出っ張っている部分があり、その部分は体表からも触りやすい部分です。
例えば、下の写真は上腕骨と言って、二の腕の部分の骨です。
上方の肩関節側に、2つの突起とその間に溝があり、
下方の肘関節側には、内・外側にそれぞれ突起があります。
また内側の突起の周りには溝があります。
骨の突起は、筋肉や靭帯が着く部分でもあります。
それは筋肉に力が入る時や、靭帯が引き伸ばされる時に、付着している骨の部分が引っ張られて突起が形成されるためです。
また、2つの突起の間や突起の周りには溝ができ、そこを神経や腱などが通っており、骨の構造によって安定します。
こういったように、骨の突起やその周囲の溝などには筋肉が付着していたり、腱、神経が走っており、障害が起きやすい部位になります。
先ほどの肩の写真で例を挙げると、
肩関節側の2つの突起には「腱板」と言われる肩の筋肉が付着し、その間の溝には上腕二頭筋(力こぶの筋肉)が通ります。
「腱板断裂」という肩関節の病気(当院院長の専門分野)を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。この病気の方は、腱板が着く2つの突起や溝周囲に痛みを訴えることが多々あります(腱板については当院ホームページもご参照ください)。
その他にも障害の例として、
- 骨の突起周囲の障害では、
- テニス肘(肘の外側の痛み)
- オスグッド・シュラッター病(成長期に起こる膝の痛み)
- 剥離骨折(筋肉や腱の付着部が引っ張られて骨が剝がれてしまう)など
溝の障害では、
- 上腕二頭筋腱脱臼(上の写真で出てきた肩関節の溝において、上腕二頭筋の腱が外れてしまう)
- 腓骨筋腱脱臼(脚の外くるぶしの痛み)
があります。
筋肉や靭帯などは損傷している場合、指で押して圧迫を加えられるとさらに痛みが増強されます。そのため、これまで述べたような突起や、突起の間の溝などを指標に、指で圧迫を加え、どこの部分に損傷が起きているか予測を立てます。
この骨の突起などの指標は、上腕骨以外の全身の骨にもあり、男女、体型、年齢(子供は発達過程で異なる場合もあります)に関わらず、同じ特徴であるため、骨指標を参考に痛みの部位を探っていきます。
体表で触れた所見に加えて、レントゲン画像、超音波画像など検査所見と照らし合わせ、患者様の体のどこに損傷が起きているのかを判断し、治療に当たっています。
また骨の部位、位置関係がしっかり分かることで、痛みの特定だけでなく、運動においても有効に活用できます。
ストレッチは筋肉を引き伸ばすことが目的ですので、筋肉が着く骨と骨がより引き離される方向へ動かすことで、適格にストレッチできます。
反対に、筋肉を収縮させる際は、筋肉が着く骨と骨がより近づく方向に動かすことで、適格に筋の収縮を促すことができます。
肩の手術後などで、筋肉の収縮がうまく行えない場合などに、こういった誘導を行いながら、筋肉がしっかりと収縮できるようリハビリを行っています。
患者様自身が運動する際にも、こういった骨の位置関係などがわかっていると、正確な運動方法、運動の方向が理解しやすいと思います。今はネットや無料のアプリなどでも人体模型が簡単に見られるので、自分の体と照らし合わせてみるのもいいかもしれませんね!
以上、体の目印 ~骨の形について~の話でした。
余談ですが、やはり体格の大きな方や筋骨隆々の方となると、いくら突起のある骨といっても触れるのは大変です。
そのため当院では週1回程度お昼休みの時間を使って、スタッフ同士で確認しあい、経験を積むよう努めています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。