痛みとは何か? ~痛みを感じるその仕組み~

こんにちは!
ぜんしん整形外科に入職して早1年半経った理学療法士の谷原です。

新年度を迎えましたが、皆さんはこの一年どのような年でしたか?
苦労もあるかと思いますが、楽しかったなと思える1年に出来ましたか?

僕は本職のはずの剣道をサボりながら、ゴルフにハマって思考錯誤の1年…
いつかゴルフの運動理論みたいなものを書きたいなとか思っています。
まずは説得力をもたせるためにスコアを上げないと…

まだ技術が追いつく気配がないので、今回は理学療法士として力を入れて勉強したことについて書きたいと思います。

勉強したこと…それは
タイトルにもありますが「痛み」です。

思いますよね。前にもそんなブログあったよなぁ…
専門家が教える痛みのメカニズムと対処方法
痛みとうまく付き合うために
痛みとうまく付き合うために(2)

待って下さい!

アップデート情報があるんです!

あまり以前のブログとは重複しないようにしていきたいと思います。

今回は、オーストラリアを拠点として最新の疼痛学(痛みの学問)を研究しているNOI(Neuro Orthopaedic Insititute)という組織のセミナーを受講しました↓

このセミナー通して学んだことを紹介しようと思います。

◎痛みの定義の変化

2020年に国際疼痛学会が「痛みの定義」を41年ぶりに改訂しました。

改定前

組織の実質的あるいは潜在的な障害に伴う、あるいは、そのような障害を示す言葉で表現される不快な感覚あるいは情動体験

改定後

組織損傷が実際に起った時あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験

さらに、痛みに関する「6項目の付記」のなかで
・痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
・痛みと侵害受容は異なる現象です。感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
・個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。

こんなふうに述べています。

???
言葉が難しくて訳わかりませんよね(T_T)

要するになに?ってなりますよね。
僕も思いました。

簡単に伝えると
組織(筋肉や腱、靭帯、軟骨など)の損傷がなくても起こりうる痛みの存在が明確にされました。
改訂後に「起こりそうな時」という言葉が含まれていますよね。

さらに、「6項目の付記」で痛みの多様性についても言及しています。
なにかの組織が傷ついたから痛い!ではなくて、色々な要素が関連するということです。
後に詳しく記載していきますね。

◎痛みとは

実はヒトの体には「痛み」を感じ取るセンサーはないのです。
では、どのようにして僕達は痛みを感じているのでしょう。

僕たちの身体には「受容器」と呼ばれるセンサーがあります。受容器には、外部からの刺激に反応する侵害受容器や、組織損傷と炎症反応に反応する酸性感知イオンチャネルなどがあります。
これらの受容器が受け取る情報に加え、身体の各部位の栄養状態や日常で感じているストレスなどの色々な情報が脳に集められ、統合されます。

その結果、脳が「これは身体にとって危険だな」と判断すると「痛み」として身体に伝えます。

そのため、痛みは100%脳からのアウトプットであって、単一の因子(組織損傷など)によって発生するものではないのです。

「痛いのは気のせいだ!」なんて言うつもりはありませんが、
「組織損傷=痛み」ではありませんし、逆もその然りです。

◎末梢感作と中枢感作

痛みを捉える上で外せないのが末梢感作と中枢感作です。

末梢感作は、神経損傷や組織の虚血・炎症の長期化によって生じる、過剰に情報を拾ってしまう状態です。
情報の入口がバカになってしまっていて、何でも通して渋滞を起こしている感じですね。

中枢感作は、拾われた情報が必要以上に強化されて脳に送り込まれてしまう状態です。
音楽で使用するアンプが壊れていて、しっかりと音量を絞れていないような感じですね。

  • 末梢感作を引き起こさないためには、組織損傷と炎症が強く関与するため、受傷直後の正しい安静を
  • 中枢感作を引き起こさないためには、生活習慣の見直しを

行う必要がありますので、医師や理学療法士の指導に耳を傾けてみて下さい!

◎薬と痛み

当院でもよくありますが、整形外科に行き痛みを伝えると「お薬」を処方されることがありますよね。炎症止めや鎮痛剤などです。
これらの薬がどのようにして痛みを和らげるのか、簡単に説明します!

・ロキソニン

よく聞く(効く)薬ですよね。
体内で炎症反応が出ると、「シクロオキシゲナーゼ」という酵素が「プロスタグランジン」と呼ばれる発痛物質を生成します。ロキソニンは、このシクロオキシゲナーゼという酵素を阻害します。
それにより、「炎症性の痛み」が緩和します。

・リリカ

これも聞くことが多いのではないでしょうか?
リリカは、体内でカルシウムの流入を抑制して、神経を介して脳へ向かう痛みなどの信号を遮断させる作用があります。
それにより、「神経性の痛み」が緩和します。

・タリージェ

タリージェという薬も最近はよく耳にすることもあるかと思いますが、リリカとの違いは「末梢性神経障害性疼痛」に効くという点です。
リリカは「中枢性神経障害性疼痛・末梢性神経障害性疼痛」の両方に効くとされています。そのため、末梢感作を起こしていればタリージェ、中枢感作を起こしていればリリカが効果を発揮しやすい可能性があります。

◎対策と大事なこと

まず行ってほしいことは、「適切な時期に適切な対処をすること」です。
組織損傷があるときは、最初はしっかりと安静を保ち、修復に合わせて適切な負荷を与えるようにします。
負荷をかけ過ぎてもいけませんが、かけな過ぎることも良くありません。
医師や理学療法士と相談しながら調節しましょう。

また、生活習慣や食生活が乱れていても組織は効率よく修復しませんし、中枢感作が起きて痛みが引きにくくなってしまいます。

次に「正しく理解すること」です。
どんな姿勢で痛みが出るのか、楽になる姿勢はないのか
何をした後に痛みが出やすいのか、どのくらいの時間動くと痛いのか
どこが痛いのか(これ難しいですよね…)

よく分からないものって怖くないですか?
不意に来るものって怖くないですか?

急に大きな声を出されるとびっくりすることありますよね。
でも事前に大きな音が出ると分かっていたらびっくりしませんよね。

タンスの角に足の小指をぶつけるとめちゃくちゃ痛いですよね。
でも同じ強さで自分でぶつけてみても、そこまで痛くなかったりします。

自分の意識の外からくる情報には過剰に反応を起こすことがあるので、よく自分の状態を整理してみて下さい。

そうすることで自分の中の「安全地帯」が増えて「危険区域」が少なくなります。
危険区域に入ることで痛みを感じるので、安全地帯で生活することを心掛けましょう。

次第に安全地帯は広がっていきます。

そして、痛みが軽減してきたら積極的に運動することを心掛けましょう!
運動は薬です。
血の巡りが良くなることで栄養が行き届きます
筋力がつくことで関節が安定して余計な負荷がかかりにくくなります
ストレスの軽減にも繋がります

そうしていく中で、痛みのない生活を取り戻していきましょう。

◎まとめ

いかがでしたか?

難しい内容になってしまいましたが「身体を正しく理解して、正しく動くようにして下さい」ということが伝えたかったことです。
そのお手伝いを僕たちができればと思っています。

痛みのない生活を取り戻すために、精一杯の力添えをさせていただきますので、頑張っていきましょう!