野球肘検診

こんにちは、ぜんしん整形外科理学療法士の桐川です。

今回のテーマは“野球肘検診”です。

一般の方々にはこの言葉を聞いたことがない方が多いかと思います。
当院がある立川市周辺では、野球肘検診はあまり行われていないようなので無理もないかと思います。
イメージ的には皆さんも受けたことのある定期検診のようなイメージです。
症状のない選手に、隠れた異常がないか調べることを目的に行います。

野球肘検診の最大の目的は“離断性骨軟骨炎”をみつけることです。
またここで聞き覚えのないフレーズが出てきました。
“離断性骨軟骨炎”とは肘の軟骨部分及びその付着部の骨が剥がれてくる病気です。

発生する原因は、未だ一定の見解を得られておらず、明確にこれというものはありません。
症状としては肘の外側の痛みや、引っかかり、肘関節の可動域制限です。
発生率は各種報告によると1%〜3%前後と非常に稀です。

ですが、非常にやっかいな点が2つあります。
1つ目は離断性骨軟骨炎は初期症状があまり見られない点です。初期段階では日常生活や野球中に痛みを感じないことが多いです。症状がない状態で野球を続けていると、いつの間にか進行していき、痛みや関節の動きに制限が生じ、プレーに支障をきたすようになります。
初期の状態であれば、時間はある程度かかっても、完治しやすく、その後の後遺症なども残らない可能性が高いです。しかし、進行してしまうと、治るまでの時間も長くなり、完治する可能性が低くなってしまいます。

2つ目は完治するまでに長期間の治療を要するという点です。
多くの報告で1年以上、あるいは2年経過しても完治しないという結果が出ています。

また、この治療ですが、何よりも肘への負荷を減らすことが重要です。

具体的には、
・ボールを投げる
・バットを振る
・腕立てなどの腕に負担のかかるトレーニング
・トンボ掛け
などを控えていただきます。

どうしても、治癒しない場合は手術という選択肢もありますが、手術してすぐに投げられるようになるわけではありません。さらに数ヶ月に渡るリハビリが必要です。
長々と書きましたが、強調したいのは離断性骨軟骨炎は早期発見が大事ということです!

実際に“野球肘検診”とは何を行うのかというと、まず超音波画像診断装置(以下エコー検査)による骨の評価を行います。これが何よりも重要です。エコー検査は離断性骨軟骨炎をみつける有効な検査方法で初期症状の小さな病変部も拾い出すことがあります。もし疑わしい所見が見つかった場合は、医療機関への受診を促します。

このエコー検査自体はレントゲンのような被曝もありませんし、検査中に痛みなども全くありません。
しかし、このエコー検査は検査者の技術と経験を要します。適切な部位にあてる技術や病変を見抜く目が必要なのです。当院の医師であればエコー検査の経験は豊富なため安心して検査していただけると思います。

また、エコー検査以外にも身体機能の検査を並行して行うことが多いです。
当院の野球肘検診では肩関節や肘関節、体幹や下半身の柔軟性や筋機能をチェックします。それに応じたストレッチやトレーニングを指導しています。

今後も、この地域での野球選手をサポートしていくために、野球肘検診を企画していこうと思っています。今年度は2月に1度行うことができました。次回の開催予定は未定なのですが、今後もっと多くの選手の肘を守っていくことができるように頑張っていきます!!

是非、当院での野球肘検診開催の際にはご検討いただければと思います。

この度は、最後まで読んでいただきありがとうございました。