野球肘
野球肘とは?
野球肘は名前の通り、野球における投球動作を繰り返し行うことで生じるスポーツ障害です。痛みの生じる部位は肘の内側が多いですが、外側や後ろ側に生じることもあります。原因は、「投げ過ぎによるオーバーユース」「不良な投球フォーム」により肘へ過度な負担をかけていることが考えられます。
野球肘が生じる仕組み
投球時は肘へ大きな力が加わります。特に小・中学生の時期では、カラダがしっかりしていないため「肘下がり」や「手投げ」と言われるフォームで投げると、肘への負担がかなり増加します。そのため、安全なフォームを確立することがとても重要になります。
肘に痛みのある選手の多くは、投球時に胸を張って肘を後ろにひいた状態からボールをリリースするときに痛みが生じます。リリースの際には、肘が外方向に引っ張られる力が生じることで、肘の内側にある組織(靭帯や筋肉など)には引っ張られるストレスが加わり、肘の外側や後ろ側では骨と骨の圧迫や擦れるストレスが加わります。
肘の内側に痛みがある場合
痛みの部位として、肘内側の靭帯・筋腱・骨軟骨が挙げられます。肘内側の違和感程度から症状が始まり、無理をして投げ続けていると少しずつ痛みが出る場合が多いです。まれに、1回の投球で急に痛みが出ることもあります。
小学校高学年では、肘の内側にある内側上顆と言われる骨が剥がれることがあります。すると、そこに付着する靭帯が緩んだ状態となります。
適切な治療をせずに投球を続けると骨が変形したまま完全に治らず、将来的に肘が緩んだ状態になります。
肘の外側(離断性骨軟骨炎:OCD)
肘外側の野球肘として、代表的なのが離断性骨軟骨炎(OCD)と言われるものです。
骨軟骨の状態が悪化するまで、症状が軽いのが特徴です。痛みよりも肘の曲げ伸ばしが出来なくなることで気づくことがあります。肘外側に痛みがある場合には、要注意です。
症状が軽い状態で発見できれば、安静により骨軟骨の修復が期待できます。それでも、治るまでに3~6ヵ月、または1年以上かかる場合も少なくありません。
骨軟骨の状態によっては、手術を検討する場合もあります。肘の外側が気になる場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
肘の後ろに痛みがある場合(衝突型・牽引型)
肘の後ろに痛みがある場合として、衝突型・牽引型の2つのパターンが考えられます。
衝突型の場合には、肘を伸ばしきる際に痛みが出るのが特徴です。肘後ろに症状がある場合、慢性的に肘内側の靭帯が緩んでいて、後ろの骨同士が衝突することで痛みが出てきます。無理をして投げ続けると、疲労骨折を引き起こすこともあります。リハビリにも長期の安静を要して、完全復帰まで3ヵ月以上かかります。
牽引型の場合には、上腕三頭筋といわれる肘を伸ばす筋肉が肘の後ろの骨を過度に牽引する(引っ張る)ことで症状が出現します。肘に力を入れて伸ばすときや肘を曲げるときに痛みが強く出現します。中学生の年代では、骨が十分に成熟していないため上腕三頭筋が骨を過度に牽引することで骨端線といわれる成長線が開いて、痛みに繋がる場合があります。
リハビリでは何をする?
野球肘に関しては、痛みの生じている原因組織を把握することが重要です。
X線検査に加えて、野球肘検診でも使用する超音波診断装置を用いながら肘の評価を丁寧に行っていきます。
医師の診察に基づき、理学療法士が肘の曲げ伸ばしや腕の捻じる動きの改善を図ります。最終的には、投球フォームも確認し肘への負担を減らすことで再発予防に努めていきます。
野球肘検診について
当院では、スポーツ活動をされている選手に対するメディカルチェックも行っています。現在、野球に関しては各地で野球肘検診が開催されています。早い段階で肘の障害を発見することで、ケガを未然に防ぐことが出来ます。チームの検診に興味がある、子供の肘の状態を確認したいなどありましたらこちらのフォームに入力お願いします。
野球肘検診、メディカルチェックについては、当院のスタッフブログもご参照ください。
⇨ 野球肘検診
⇨ 当院での検診活動、スポーツメディカルチェックについて
また、トレーニング記事もご参照ください。
⇨ 野球肘を防ぐために必要なトレーニング(上半身Ver.)
⇨ 野球肘を防ぐために必要なトレーニング(下半身Ver.)